言葉のとおり脳の血管が傷む病気の総称.脳の血管が詰まるか(=梗塞)、破れること(=出血)によって、神経細胞に血が通わなくなり、神経細胞が死んでしまう病気です。脳の内部の細い血管が障害されるか、脳表面の太い血管が障害されるかで症状、治療法、その後の経過が全くことなります。神経細胞は、手足を動かしたり、言語機能を司ったり、空間を認識したりと、部位によって異なる様々な機能を担っており、脳のどの領域がどのような機序で傷害されたかによって多彩な身体症状がでます。
脳梗塞と脳出血の鑑別は頭部CT検査で瞬時に見分けることが可能になりましたが、頭部CTが普及していなかった時代は、両者の鑑別はしばしば困難であり、脳卒中(=脳血管障害)とよばれていました。
脳血管障害に比べ心筋梗塞が多い欧米人とは対照的に、日本人(東洋人)は圧倒的に脳血管障害が多いことが知られています。
脳血管障害は日本人の国民病です。高齢化社会を迎え脳血管障害患者さんの数は増加の一途をたどっています。いかに予防を行っていくかが益々重要な課題になっています。

 

特殊なものを除けば、脳血管障害になったヒトの大半(90%以上)は高血圧症を有しています。これに加えて、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、喫煙歴、など血管を傷める危険因子を有しているヒトはさらに脳血管障害の危険度が高まります。脳血管障害の家族歴のあるヒトはとくに注意が必要です。40歳前後からこれらの危険因子を有しているかどうかが明らかになってくることが多く、このような方は50歳を過ぎたあたりから更なる注意が必要になってきます。

 

最も代表的な症状は、顔面を含む半身(手、足)の麻痺もしくはしびれです。生活習慣病を持っている方、家族歴のある方で、これらの症状が突然現れた場合はまず脳血管障害と考えて間違いありません。また、言語の障害(言葉が上手くしゃべれない、ろれつが回らない)や視覚の障害、さらには、認知症のような症状が突然でてきたという場合も脳血管障害を強く疑う所見です。

>>九州大学腎高血圧脳血管内科(第二内科)所属の脳卒中専門医師が派遣されている病院リスト

 

発症から4.5時間以内の脳梗塞(血管がつまった場合)で、とくに副作用の発生がないと判断された場合は、tPAと呼ばれる血栓溶解の特効薬(注射)による治療を受けることができます。現在、この治療を受けることができているのは前脳梗塞患者の5%前後と考えられており、一刻も早い受診が勧められます。
どの血管が詰まったかにもよりますが、近年脳血管内カテーテル治療による血栓除去治療が急速に普及しつつあります。
脳血管障害の入院治療は,超急性期の血栓溶解・除去治療の可否に関わらず、
①急性期の全身管理、②脳血管障害の原因検索、③再発の予防、の3点に主眼がおかれます。脳梗塞になった方は、1年以内の再発が多いことが知られていますので(FSRでは6%)*、急性期治療に良くなったからといって、その後の再発予防を怠ってはいけません。*参考文献 Kamouchi et al. Cerebrovasc Dis 2012

急性期病院で、①〜③の検査・治療を行いながら、リハビリ治療を並行して行うことがあたり前の時代となりましたが、何らかの障害が残存した場合、①〜③終了後、速やかにリハビリテーション専門施設へ転院してリハビリテーション治療を継続して行う必要があります。脳血管障害の場合,発症から2ヶ月以内であれば、回復期リハビリテーションと呼ばれ、集中的なリハビリテーション治療を提供する施設への転院が可能です。一般に脳血管障害後の機能回復は3−6ヶ月後にピークに達すると考えられており、最大6ヶ月の回復期リハビリが可能な仕組みとなっています。
脳血管障害後の神経機能を回復させる治療は、現在リハビリ治療しかありません。現在、再生医療の研究が様々な方向からなされており、今後の大きな課題となっています。